昭和名作館

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「嵐を呼ぶ男(1957)」~~おいらはドラマー!

嵐を呼ぶ男(1957)
1957(昭和32)年/日活
監督:井上梅次
出演:石原裕次郎/北原三枝/青山恭二/小夜福子/芦川いづみ/金子信雄/岡田眞澄/白木マリ/笈田敏夫/安部徹
主題歌:「嵐を呼ぶ男」石原裕次郎


裕次郎の代表作のひとつであり、ドラムを叩きながら歌うシーンが非常に印象的な本作。
青年が一気にスターダムを駆け上がり仕事に恋に人生謳歌するわかりやすいスター誕生物語かと思いきや、実は母子の愛憎をテーマとした暗い青春映画だというのがミソでしょう。

 

【あらすじ】
シックスジョーカーズの人気ドラマー・チャーリー桜田(笈田敏夫)の扱いに手を焼くマネージャーの美弥子(北原三枝)。そこへ音大生の国分英次(青山恭二)が、兄・正一(石原裕次郎)を売り込みに来る。天狗になってステージをすっぽかしたチャーリーの穴を埋めるため、美弥子は早速正一を起用した。
チャーリーは持永興行と勝手に契約を交わして美弥子の元を去り、代わりに正一がシックスジョーカーズのドラマーとなる。しかし、母親(小夜福子)からは良い顔をされず、正一は美弥子の家で住み込みでドラムの特訓を重ねる。
ある日、正一は評論家の左京(金子信雄)と取引を交わす。チャーリー以上に売り出してもらう代わりに、左京と美弥子との仲を取り持ってやろう、と…。


冒頭のステージで歌うのは平尾昌晃。まだソロデビュー前ですね。イキの良い華やかなステージングに、初っ端から心を鷲掴みにされちゃいます。

元々ジャズドラマーだったフランキー堺(留置所の男)や、クレージーキャッツの安田伸(楽団のサックス奏者)といった音楽関係者も、ノンクレジットで出演しています。

日活名物・白木マリの謎ダンスも、この頃からやってたんですね~。

チャーリーとのドラム合戦に挑む裕次郎。左手を怪我して上手く叩けないため、巻き返しの策で突如歌い出します!
「おいらはドラマ~♪やくざなドラマ~♪」
ドラム対決になってないじゃねえか!とか、チャーリーも対抗して歌っちゃえばよかったんでないの?とか、色々ツッコミたくなる気持ちは置いといて、これ見ちゃうと、やっぱり裕次郎ってカッコイイよなぁ…と惚れ惚れして溜息が出ちゃいます。
せっかくだからチャーリー役の笈田敏夫(ジャズシンガー)の美声も聴きたかったってのが正直な気持ちですが、歌勝負になってしまったら裕次郎に勝ち目はなかったでしょう…(笑)
鮮やかなスター誕生の瞬間を客席で見つめる金子信雄が「あいつには何かしら人にウケる要素があるのさ」と呟きますが、これはもう石原裕次郎という人間自体がそういう存在ですからね。まさに裕次郎のための映画でしょう。

そんな大スター様ですが、家に帰れば毎度毎度どんよりジメッとした暗く重たい空気に襲われます。
クズ人間だった父親にソックリだからといって息子を憎悪し辛く当たり、どんなに成功しても「あたしはお前を怨むよ」とまで言い放つ母親。自分が腹を痛めて産んだ子なのに何故にそこまで言えるのか、もはや親としての責任を放棄しているとしか思えません。

あまりにも酷い母親の仕打ちに、観ているこちらまでどんより暗くなりますが、そんな中でキラキラと輝きを放つ芦川いづみ様の存在が一服の清涼剤となっております。
北原三枝との恋の鞘当てにプリプリするいづみちゃん、怒ったお顔までなんと素敵なのでしょう!!

スターの座に上り詰めた裕次郎くんですが、そこから転落人生が始まります。
ラストは裕次郎の再起への道へ光が見えるのか、はたまた北原三枝とどうにかなるのかと思いきや、なるほどそう来ますか!という意外性がありました。ただ、母親の急変っぷりがあまりにも安易すぎるのは否定できませんが(笑)

大事なものと引き換えに、一番欲していたものを手に入れられた。
スター・国分正一はこれで幸せだったのかしら。色々考えちゃいますね。

単なるサクセスストーリーに終始せず、スターの光と影を描いたのが良かったですね。こういうちょっと湿っぽいの、結構好きです。

個人的に、裕次郎の映画はデビューから60年代前半のものが凄く好きで、この作品もお気に入りの一つ。
ツッコミどころ満載ですが、肩ひじ張らずに観られるこの安易さってのが物凄く心地よいのです。