昭和名作館

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「男はつらいよ フーテンの寅」~~バカな男でござんす

男はつらいよ フーテンの寅
1970(昭和45)年/松竹
監督:森崎東
出演:渥美清/倍賞千恵子/新珠三千代/森川信/三崎千恵子/前田吟/春川ますみ/香山美子/花沢徳衛/河原崎建三/左卜全/笠智衆/佐藤蛾次郎/太宰久雄/悠木千帆
主題歌:「男はつらいよ」渥美清


新珠三千代をマドンナに迎えたシリーズ第三作目。
シリーズ全48作中、山田洋次以外が監督を務めた作品が2作ありますが、本作はそのうちの1本です。
今回は三重県の湯の山温泉を舞台に、番頭になった寅さんがドタバタを繰り広げます。

 

【あらすじ】
タコ社長(太宰久雄)の計らいで寅次郎(渥美清)に縁談が持ち込まれたが、その席に現れたのは寅次郎とは旧知の仲の駒子(春川ますみ)だった。駒子には亭主がいたが、浮気された腹いせに自分も男をつくってやろうと見合いにきたのだった。駒子と亭主の仲を取り持った寅次郎。二人の結婚式を挙げてやったまではよいが、その費用を全部とらやのツケにして竜造(森川信)たちと揉め、寅次郎はまた旅に出る。
一月後、湯の山温泉に旅行にやって来た竜造とつね(三崎千恵子)は、偶然にも宿泊先の旅館で寅次郎と再会。寅次郎は旅館の女将・志津(新珠三千代)の魅力にとりつかれて、番頭になっていたのだった…。


本作は監督が異なるということもあり、他に比べて毛色が違う作品になっていると思います。何とも言えない泥臭さがあっていいですね。

女の理想高すぎで色々うるさい寅さん。タコ社長やおいちゃんが言う通り、自分のことがまるでわかってないんですが、でもこういう人いるね~いるいる!と、なにか物凄い説得力があります。
自分のことがまるで何も出来ていない人間に限って他人に厳しかったり煩かったりするのは一体なぜなのでしょう。それで劣等感を埋めて、自分が優位に立ったかのような錯覚の中で生きているのかもしれませんね。なんだか哀しい話です。
こういう”あるある”が散りばめられているのも本シリーズの面白さの一つかと思います。

今回の女性陣はマドンナの新珠三千代をはじめ、香山美子、春川ますみ、悠木千帆…と、綺麗どころから個性派まで揃ってて見ていて楽しい。
マドンナとの絡みが少ないのがちょっと残念な気はしますが、それにしても新珠さんはさすがの風格ですね。

非常に印象的だったのは、染奴(香山美子)の四日市の自宅のロケーション。
モクモクと煙を上げるコンビナート群との対比が貧しさや惨めさを一層引き立たせて切ないです。ぽつんと時代に取り残されたような密やかな佇まいが、強烈な印象を残します。抒情性に満ちた素晴らしい画になってますね。
本作で一番印象に残るシーンを聞かれたら、私はここを挙げたいです。

ラストは笑いの中にも哀愁が漂い、ちょっぴり泣けますね。ある程度の年齢に達すると、全国放送で子どもがいるなんて嘘をペラペラ喋っちゃうあの寅さんの気持がなんとなくわかるようになりますね。
序盤の結婚式のエピソードもそうですが、金もないのにデカい顔したり、寅さんの”ええかっこしい”なところが存分に発揮されている作品かと思います。
そんな本作の寅さんを見ていると、植木等の『だまって俺について来い』が頭の中でぐるぐる回り始めます。
「銭のないやつぁ~俺んとこへ来い~♪俺もないけど心配するな~♪」
…まぁ、寅さんはあれでよいのでしょう。
本当にしょうもない人間なんだけど、そこに生々しい人間らしさが感じられて、どうしようもなく惹かれるのです。