昭和名作館

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「続・男はつらいよ」~~思い描いた瞼の母とは、ちっとばかし違ったが…。

続・男はつらいよ
1969(昭和44)年/松竹
監督:山田洋次
出演:渥美清/倍賞千恵子/森川信/三崎千恵子/前田吟/東野英治郎/佐藤オリエ/ミヤコ蝶々/風見章子/山崎努/笠智衆/津坂匡章/佐藤蛾次郎/太宰久雄


佐藤オリエをマドンナに迎えたシリーズ第二作目。
今回は寅さんの産みの母を巡って色んな騒動が巻き起こります。

 

【あらすじ】
一年ぶりに柴又に戻った寅次郎(渥美清)。
商業学校時代の恩師・坪内散歩(東野英治郎)の家に立ち寄ると、散歩の娘・夏子(佐藤オリエ)の美しく成長した姿に心奪われる。坪内家でご馳走になった寅次郎だが、良いものを食べ過ぎて胃痙攣で入院することに。ところが病院から脱走し、果てには飲食店で騒ぎを起こして警察の世話になる。さくら(倍賞千恵子)たちに迷惑をかけ、いたたまれなくなった寅次郎は、再び旅に出る。
一か月後、京都に旅行にやってきた坪内親子は、偶然にもそこで寅次郎と再会する。
実は母親捜しのために京都にとどまっていたという寅次郎。夏子に付き添われて母親に会いに行くが…。


序盤の寅さんは不快感すら覚えるとんでもない輩感満載なんですが、一転して中盤の母親捜しのあの流れは泣かせますねぇ。

寅さんは風見章子みたいなお上品なお母様を想像し再会を夢見ていたのに、目の前に現れた実母・お菊(ミヤコ蝶々)はキッツイおばはん。
お菊さんは一瞬だけ母親の温かい眼差しを見せますが、ハッと我に返り、口汚く寅さんを罵ります。あえて突き放すところに、息子への思いを感じて泣けますね。
芸者→連れ込み旅館の女将という人生を歩んできたお菊さんですが、息子を手放し、女一人でこういう世界でどんな思いで生きてきたのか、その思いを推し量ると何とも言えませんね。
後ろめたさやら何やらが複雑に絡み合うその心情が語られることはありませんが、そんな女の哀しさをミヤコ蝶々が素晴らしい演技で魅せてくれて、グッと心を掴まれます。

寅さんは打ちのめされて、ヨレヨレになって柴又に戻ってきます。
腫れ物に触るように気を遣いまくる周囲に対し、なんだかんだ人にベラベラしゃべりたくってしょうがない構ってちゃんな寅さん…この対比が可笑しくって可笑しくってしょうがない。
極めつけのハナマルキのCM投下で、もう笑いが止まらない。

そして、お菊さんと同じくらいの重要人物が、東野英治郎が演じる散歩先生。
寅さんを諭し、後押しし、時には叱りつけ、一緒に泣く…父親のような深い愛情を寅さんに注ぎます。また、娘の夏子さん(佐藤オリエ)も母性を感じさせ、屈託ない笑顔と優しさでふんわり寅さんを包み込みます。
親代わりのおいちゃん・おばちゃんと並んで、坪内親子もまた寅さんにとっては心を許して寄りかかることが出来る親のような存在ですね。先生が”親のような存在”であったことが、寅さんとお菊さんを結び付ける一つのポイントにもなっていると思います。

終盤、散歩先生があんなどうでもよい我儘をグダグダ言うのはなぜなのか、大体の予測はついてしまうのですが、やっぱり切ないですね。
「老病死別」…この言葉が表す人間の悲しみを身をもって知り、涙に暮れる寅さん。御前様には説教されますが、オジサンになっても感情の赴くままに人目もはばからず声上げて泣ける…こんな大人がいてもいいんじゃないでしょうか。まぁ、泣いてばかりでなく、やることはやらなきゃいけないけれども。
日本では感情を抑えて耐えるのが美徳とされてますが、寅さんを見ていると、人間本来あるべきの自然な姿を見せてくれているような気がしてね。

ラストのオチが素敵すぎて、笑えるやら泣けるやら。
やっぱり親は親だし、子は子なんですよね。
腹立ち紛れに「淫売上がりの女」なんて酷い言葉を浴びせても、心の底では「おかあちゃーん!」って叫んで思いっきり甘えたかったのさ。どんなに年食ったって、お母ちゃんと一緒に歩いて、笑って、甘えて、叱られたい。人間みんな、そんなもの。
でも、それができるのは生きている間だけ。
親のように慕っていた散歩先生との悲しいお別れを経験して、改めて産みの母に対する思いに気付かされたのでしょう。
そして、寅さんとお菊さんを陰からそっと優しい眼差しで見守る夏子さん。
温かい余韻を残してくれる、シリーズ屈指の素敵なラストシーンだと思います。