昭和名作館

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「男はつらいよ」~~寅次郎、ただいま帰還!

男はつらいよ
1969(昭和44)年/松竹
監督:山田洋次
出演:渥美清/倍賞千恵子/森川信/三崎千恵子/笠智衆/光本幸子/津坂匡章/前田吟/志村喬/佐藤蛾次郎/太宰久雄


寅さんシリーズの記念すべき第一作目です。
全48作もあるので観る順番がバラバラになりがちなシリーズですが、一作目から順番にのんびりと感想を書いていこうと思います。

 

【あらすじ】
20年ぶりに故郷・柴又へと戻って来た寅次郎(渥美清)。
妹・さくら(倍賞千恵子)の縁談に付き添うがぶち壊してしまい、再び放浪の旅に出る。
旅先の奈良で御前様(笠智衆)と娘の冬子(光本幸子)に遭遇した寅次郎は、久しぶりに再会を果たした冬子の美しさに心を奪われ…。


私は数年前まで柴又のすぐ近くに住んでいたので(12年ほど住んでいました)、このシリーズを観るとその当時を思い出します。
帝釈天、水元公園、江戸川の河川敷…本当にすべてが懐かしく、オープニングの口上から泣けて泣けて仕方がないです。
以前住んでいたから感慨深いっていうのもありますけれど、泣ける理由はそれだけではないです。
私は今も故郷の田舎町からは離れて暮らしていますが、本作を観てあの口上を聴く度に、故郷から旅立った十八の春を思い出すのです。一度でも生まれ故郷を離れたことのある人間ならば、このオープニングはかなり沁みるものがあるでしょう。

柴又に戻ってきて早々に可愛い妹の縁談をぶち壊してしまう寅さんですが、まぁ憎めないですよね。
酔っ払って管巻いて迷惑かけるのはいただけませんが、屁がどうたらこうたらの件は最高に面白いと思いますけどね。堅苦しい見合いの席であんなしょうもない話で笑わせてくれるオッサンがいたら、気が楽になってかえって助かりそうな気がして、私だったら感謝しちゃうかもですね。
こんな人が身内に居たらちょっと恥ずかしいのかもしれないけれど、少年の面影を残す自由奔放で天真爛漫な振る舞いはとても愛おしく、羨ましくもあります。

さくらは縁談をめちゃくちゃにされはしましたが、おかげで博(前田吟)とめでたく結ばれることになるので、結果的に寅さんのファインプレーと言ってもよいのではないでしょうか。

さくらが博を追いかけて柴又駅にやってくる…とても感動的なシーンですが、元住民としては「当時の柴又駅や京成の車両ってこんなだったんだ~」と、話の筋とは全く関係のない別の部分にも感動を覚えます。
ちなみに、このシーンで登場する京成電鉄の車両・赤電は、2009年に京成電鉄の100周年記念事業で復活して再び京成線を走りました(赤電の他に、青電とファイアーオレンジも復活しました)。私も何度も乗りましたが、こういうのってホッコリしていいですね。特に鉄道ファンというわけではありませんが、こういうのは本当に嬉しいです。(リバイバル赤電は3年半ほど営業運転しました。)

それにしても、初期の寅さんは本当に荒々しいですね。傍若無人という言葉がピタリとはまります。
ただ、寅さんの悪いところをよくよく観察すると、日本人の嫌な部分を凝縮したようなところがあったりします。自分の価値観を押しつけたがるところなんて、まさにそうでしょう。そして半世紀近く経った今の時代も、日本人のそういう性質ってあまり変わってないんじゃないですかね。
本能の赴くままに、風に揺蕩うように生きる寅さん。一見めちゃくちゃやってるように見えますが、実は生真面目すぎる日本人が憧れる生き方なのかもしれません。
根底に流れる人の好さは隠しきれないし、だからこそ、寅さんは長きにわたって愛されているのでしょうね。