昭和名作館

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「火の鳥 ヤマト編」~~ヤマトの王子が火の鳥から与えられた使命とは。

火の鳥 ヤマト編
1987(昭和62)年
監督:平田敏夫


手塚治虫原作の漫画『火の鳥』ヤマト編のOVA。
古墳時代を舞台に、ヤマトの王子とクマソの女の愛と悲劇を描いています。


オグナは旅の途中で突然飛んできた矢に撃たれ、矢を放ったクマソの女・カジカの家で手当てを受ける。二人は恋に落ち、オグナはカジカの兄・川上タケルにも気に入られ、このままクマソの人間になってくれと懇願される。
しかし、オグナはひとり悩む。実はオグナはヤマトの王子で、クマソの首領・川上タケルを討ってこいとの命を受けていたのだった。
火の鳥の導きにより、オグナは川上タケルを殺めてヤマトへ戻る道を選び、カジカは兄の仇を討つためにオグナを追ってヤマトへ行く…。


本作はOVAなので、劇場公開はされておりません。
でも、本作含めて『火の鳥』って本当に素晴らしい作品ですから、こういう作品こそ是非劇場で公開してほしいし、ずっと観ていたいと思わせます。

本作は古墳時代が舞台で、ヤマトの王子・オグナを主人公に、恋や葛藤、美しい生き方が描かれています。

カジカと恋に落ちたオグナはこのままずっとクマソに居たいと思い始めますが、国に居る家族のことを思い出し、命令通り川上タケルを討つべきかどうか悩みます。
そんな時、火の鳥に出会い、どうするべきか助言を求めます。火の鳥はヤマトの国の方角へ飛び立ち、オグナは命令を敢行してヤマトへ戻ることを決意します。

クマソの守り神といわれている火の鳥のお告げにより、クマソの首領である川上タケルが消されてしまうというのは何とも皮肉なことですが、オグナにはこの時はまだ自分自身も知る由のない大きな使命が残されていたので、そのために火の鳥に生かされたのでしょう。

ヤマトへ戻ったオグナは、そこで父が亡くなったことを知り、また自分は父や兄たちから疎まれていた存在だったということも知るのです。
家族から疎まれ、愛する人から命を狙われ、絶望の淵に立たされるオグナですが、それでも全てを受け入れ真っ直ぐに生きようとする心根の優しさ溢れるその姿は美しい。

カジカもまた可哀想な子ですね。
愛する人に裏切られて大切な家族の命を奪われ、敵討ちの旅に出る。でもやっぱり、どんなに憎くてもオグナを愛しているのです。
こういうとき、普通の人間なら敵を許せるものでしょうか。

本作では、「赦し」が一つの隠れたテーマになっているように感じました。
あるがままを受け入れて赦す…この境地まで達することができたら、人間日々穏やかで平和な心でいられるのかもしれませんね。
まぁ、普通の人間にはとても難しいことなのですが。

オグナとカジカは永遠に結ばれるわけですが、その結末はあまりにも悲しすぎます。
でも、二人の結末にはちゃんと意味があって、オグナも火の鳥から授かった使命を果たせたわけですから、完全なる悲劇というわけでもないのかもしれません。
まぁ、この辺は意見が分かれるかもしれませんが。

二人の魂は火の鳥となって、永遠に輝き続けるのでしょう。