昭和名作館

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「水戸黄門(1960)」~~えどずん先生の幸せ講座

水戸黄門
1960(昭和35)年/東映
監督:松田定次
出演:月形龍之介/東千代之介/中村賀津雄/中村錦之介/大川橋蔵/大友柳太朗/丘さとみ/桜町弘子/大川恵子/山形勲/片岡千恵蔵/市川右太衛門


月形龍之介主演の水戸黄門シリーズ13作目となる東映オールスター映画。
光圀一行が、江戸で頻発していた大火の謎を追う。


元禄四年二月十四日、四谷伝馬町で大火が起こる。さらに同年五月三日には駒込、六月には半蔵門外平河町で立て続けに同様の大火が起こる。
身分を隠し飯屋を訪れた光圀(月形龍之介)は、浪人の井戸甚左衛門(大友柳太朗)と知り合う。一行は甚左衛門の長屋に泊めてもらうことになるが、長屋へ着くとそこで甚左衛門の友人・村尾が死んでいた。甚左衛門は無実の罪を着せられ捕らえられるが、光圀や放駒の四郎吉(中村錦之介)らが奉行所に掛け合って出獄させる。
その後、光圀や四郎吉・甚左衛門らは、放火しようとしていた集団と遭遇、追いかけるのだが…。


黄門様は身分を偽って「梅右衛門」と名乗り、甚左衛門たちからは「うめぇもんさん」と呼ばれる。

本作では助さん格さんはあまり目立たないのだが、駕籠屋に扮した助さん格さんのやらかし&へっぴり腰には大爆笑!
駕籠の底が抜けてるのも気付かずに「すっかり楽んなったじゃねぇか!調子がいいぜ!!」なんて言ってんじゃないよ(笑)

本作の実質的な主役は、大友柳太朗が演じる「えどずん」こと井戸甚左衛門だろう。
のんびり者の呑兵衛浪人だが、一連の事件の黒幕を追い詰めるのにかなり重要な役割を果たしている。そして、彼のキャラがこれまた最高。ズーズー弁丸出しで『いなかっぺ大将』の大ちゃんみたい。錦ちゃんが演じるチャキチャキの江戸っ子・四郎吉との掛け合いが最高に面白いのだ。
自分で突き放しといて必死にえどずんの気を惹こうとするツンデレ四郎吉に、それをニヤニヤ眺めるえどずん先生…二人とも可愛いくって仕方がない!!

えどずん先生が出獄した時に、もう一人の浪人・片岡千恵蔵が一緒に出獄してくる。怪しさ満点の千恵蔵だが、その正体には驚かされる。
それにしても、千恵蔵や右太衛門の圧倒的な存在感よ!これが脇でチラッと出てくるって、なんという贅沢!今の時代には、もうこのような作品は作れないでしょうね。

本作で最も印象深いのは、ラストのえどずん先生の素晴らしいトーク。
うめぇもんさんから仕官の話を持ち掛けられたえどずん先生は、あっさり断ってしまう。
「人間は余分なものを持つから余分な苦労をするだよ」と。
断捨離だとかシンプルな暮らしだとかが最近流行っているが、突き詰めればその精神というのは、えどずん先生が言っているのと同じところに行きつくのだと思う。色んなものを持ちすぎると執着が生まれるし、そこから様々な苦しみが生まれてしまうのだろう。
えどずん先生には執着心というものが全くなく、少しの米を食って、楽しく酒が飲めればそれで幸せだという。肩書や何を持ってるかは、えどずん先生の幸せとは全く無関係なのだ。
本当の幸せとはなんぞや、精神的豊かさとはなんぞや、ということを考えさせられる作品であった。

【ビデオ配信】水戸黄門(1960)