昭和名作館

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「トラック野郎 一番星北へ帰る」~~桃次郎のふるさと

トラック野郎 一番星北へ帰る
1978(昭和53)年/東映
監督:鈴木則文
出演:菅原文太/愛川欽也/せんだみつお/大谷直子/黒沢年男/新沼謙治/田中邦衛/春川ますみ/嵐寛寿郎/谷村昌彦
挿入歌:「仮面舞踏会」黒沢年男
    ごめんよ」新沼謙治
    トラック野郎の三度笠」須賀良


大谷直子をマドンナに迎えたシリーズ第8弾。
本作では主題歌の『一番星ブルース』が使われておらず、その他にも松下家の子どもたちを演じる子役が全員入れ替わり、マドンナ登場時のお星さまキラキラもなくなったりと、これまでの作品との相違点がいくつか見られる。


二代目・花巻の鬼台貫(田中邦衛)からどうにか逃げ切った桃次郎(菅原文太)だが、その後公務執行妨害で逮捕され、24時間拘留される。桃次郎が釈放されると、ドライブイン「おふくろ」で出所祝いが行われるが、その席で孫六(谷村昌彦)から借金の保証人になってくれと頼まれたジョナサン(愛川欽也)はあっさりサインしてしまう。
その後、桃次郎はジョナサン夫妻の勧めで見合いをすることになったが、見合い相手ではなく付き添いで来ていた北見静代(大谷直子)に一目惚れしてしまう…。


上述の通り、本作から子役が全員入れ替わっているのだが、これまで子どもたちの成長も楽しみに観ていたのがいきなり全員替わってしまうと、ちょっと寂しいものがある。
前作まで野球帽を被ったり練習着姿で登場していた次男の幸次郎は、今回は書初めで「〇勝大洋ホエールズ」(〇の部分は画面が切れて見えず)と書いており、大洋ファンであることが判明。やっぱり川崎在住だから?思えば、前作までのグリーン×オレンジの帽子も、ちょっと大洋っぽかったかも。

そして、今回は二代目の「花巻の鬼台貫」が登場する。
前々から疑問に思っていたのだが、初代・花巻の鬼台貫のジョナサンは宮城県警という設定だったが、花巻は岩手なのに、なぜ宮城県警という設定だったのだろう。ただ単に、花巻を宮城と勘違いして製作してしまったということなのだろうか???
なお、二代目の田中邦衛はちゃんと岩手県警という設定に変更されている。

今回は、桃さんの故郷が明らかになる。静代たちと訪れたダムこそが、桃さんの故郷だったのだ。
傍らには「岩手縣紫波郡蟹澤村水没追悼碑」と書かれた碑が建っており、桃さんは岩手の紫波郡出身だったことがわかる(蟹澤村は架空の村である)。また、碑には「昭和三十二年春 蟹澤村水没」とも書かれている。
桃さんが小学校六年のときにダム工事が始まって全部沈み、水没した後は青森・下北の小さな漁村に住み、その後すぐに父親が海で遭難したことが桃さんの口から語られる。
バックに流れる『ふるさと』が郷愁を誘い、涙なしでは観られないシーンだ。

日本の美しい風景が失われつつあったこの時代、桃さんやジョーズ軍団のように、様々な事情で故郷を追われる辛い経験をした人は少なくなかったのだろう。
物質的には豊かになったけれども、その代償はあまりにも大きかったのかもしれない。

静代の息子・誠(加瀬悦孝)と桃さんの男のドラマも泣かせる。
誠は幼いながらも自分が母親を守っていかねばならないという自覚があったのではないだろうか。最初桃さんを突っぱねていたのも、大事な模型を壊されたのが原因なのは確かだが、それだけが理由ではないだろう。桃さんを受け入れることが、亡くなった父親に対する裏切りだと思っていたのかもしれないし、その小さな胸の内の苦しみは計り知れないものがある。
和解後の二人の姿は本当に微笑ましく、桃さんも良い父親になれそうだなぁ…なんて思ったのだが、あまりにも唐突過ぎる別れが悲しかった。

岩手出身の新沼謙治の素朴で自然な演技が良いし、ギター片手に聴かせる歌も良い。
宮沢賢治の故郷・花巻を舞台に、賢治が愛した鹿踊りも登場し、石川啄木の『飛行機』が使われたりと、抒情詩的雰囲気が漂う美しい作品となっている。

間違いなくシリーズで一、二を争う傑作だろう。