昭和名作館

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「トラック野郎 度胸一番星」~~ふるさとは遠きにありて思ふもの

トラック野郎 度胸一番星
1977(昭和52)年/東映
監督:鈴木則文
出演:菅原文太/愛川欽也/片平なぎさ/千葉真一/八代亜紀/夏樹陽子/宮口精二
主題歌:「一番星ブルース」菅原文太・愛川欽也
挿入歌:「恋歌」八代亜紀


マドンナに片平なぎさを迎えたシリーズ5作目。
桃さんが幽霊に一目惚れするところから始まる本作は、シリーズで唯一、桃さんがマドンナから愛の告白を受ける作品である。


深夜の雨の中、新潟の曽地峠を運転していた桃次郎とジョナサン。尿意を催し車から降りた桃次郎は、水子地蔵の近くで白い着物姿の女と出会い一目惚れしてしまう。女は「佐渡で…」という言葉を残して、闇のなかへ消えていった。
佐渡へ渡った桃次郎とジョナサン。桃次郎は学校近くの水子地蔵の前で教師の水名子(片平なぎさ)と出会うが、その顔をみて驚く。峠で出会ったあの白い着物の女とそっくりだったのだ…。


勉強熱心な桃さんは、今回は佐渡のお勉強。なぜか三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を片手に今日もゆく。

佐渡へ着くと、桃さんは教育者、ジョナサンは砂金堀りに変身。
桃さん先生のスーツ姿は昭和初期のオッサンかと思わせるような衣装センスで、ズボンがつんつるてんなのが泣ける。

遠足に行った桃さんとジョナサンが凧に掴まり大空高く昇っていくシーンは壮観。くだらないけど、こうして空を飛ぶのは誰でも一度は憧れるだろう。「凧に乗って空を飛びたい!」という全ての人類の夢が叶った瞬間に立ち会えたことを嬉しく思うぜ!
凧にぶら下がる桃さんとジョナサンが人形丸出しなのはご愛嬌。

楽しい教育ライフを送る水名子と桃さんだが、この二人が繰り返し口にする台詞がある。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの」
これは室生犀星の『小景異情 そのニ』の有名な一節で、この作品の重要なキーワードにもなっている。それを「いい歌謡曲ですね。都はるみでしょう!」と言ってみたり、せっかくのムードをぶち壊しちゃうのはやっぱり桃さん。そこが彼の最大の魅力でもあるのだけど。

今回のライバル・ジョーズ(千葉真一)は、取巻き連中を引き連れて軍団で周囲を荒らしまわる。
ジョーズの故郷の角海村は、原発誘致のために売られたのだった。そして、ジョーズの取り巻き連中もそれぞれ似たような事情があった。
しかし彼らだけではなく、桃さんもまた、生まれ故郷がダムに沈んでしまったという悲しい過去がある。だからこそ、そんなことを理由に人生捨てて腐ってるジョーズ軍団が許せずに怒りの鉄槌を下すのだろう。桃さんのこういう真っ直ぐなところに、男気を感じずにはいられない。

そんな桃さんに幸せの気配が。なんと水名子から逆プロポーズされるのだ。
桃さんにもやっと春が訪れるか!と思った矢先に、悲劇が起こる。

水名子が嵐のなか砂金掘りの道具を取りに行く場面は、『大菩薩峠』のような雰囲気を感じさせる。
悲しいけれど、それゆえに美しい。

片平なぎさはトラック野郎シリーズのマドンナの中では間違いなく一番かわいいし、水名子先生はとても素敵だっただけに、幸せな結末が見られなかったのは本当に悲しいことだ。

シリーズ史上最も切ないストーリーだが、八代亜紀の歌が優しく心をなぐさめてくれるのだった。