昭和名作館

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「最後の特攻隊」~~苦悩を越えたその先は…

最後の特攻隊
1970(昭和45)年/東映
監督:佐藤純彌
出演:鶴田浩二/内田朝雄/見明凡太朗/大木実/小池朝雄/高倉健/梅宮辰夫/菅原文太/伊吹吾郎/藤純子/山本麟一/渡辺篤史/若山富三郎/笠智衆/笠置シヅ子


東映の豪華オールスターキャストが集結した超大作。
特攻隊とその護衛部隊である直掩隊を題材に、記録映像も交えながら戦場での人間ドラマを描く。


特別攻撃隊の人選を命じられた海軍大尉の宗方(鶴田浩二)は、「指揮は自分が執る」と志願する。
出撃の朝。搭乗員の中には、特攻隊の結成に反対していた矢代少将(見明凡太朗)の姿もあった。特攻作戦はこれ一回きりにして戦局を収拾したいとの思いから、自ら出撃したのだった。矢代は敵艦に突入したが、負傷した宗方は帰還し非難され、その他はすべて敵に撃墜された。
矢代の墓参りに行った宗方は、そこで矢代の息子(高倉健)も特攻隊に志願するという話を聞く。宗方の家では、反戦思想の父親(笠智衆)が憲兵に連行されていった。
わずか13%だった特攻の成功率を上げるため、特攻隊を護衛する直掩隊の指揮官に宗方が任命される。鹿屋へ赴任すると、そこへ矢代の息子もやってくる…。


これまでにも特攻隊関連の作品は観てきたけれど、その中でもかなりの良作だと思った。白黒作品だが、それが作品全体に重厚感を与えていて、物語により深みを感じさせる。

特攻に対する思いは人それぞれ。
人間を爆弾に仕立てる特攻作戦はこれ一回きりにしたいと、自ら敵艦に突っ込む少将。戦争反対だからこそ、一日も早く戦争を終わらせるために特攻を志願したという者。一回きりで死ぬのではなく生き残るだけ生き残って何十基も叩き落してやると言って、特攻に志願しない者。
賛成でも反対でもそこに共通しているのは、みな強い信念のもとに戦っているということ。

どれだけ軍人精神を叩きこまれようと、死ぬのが怖くない人間なんていないだろう。なぜ戦えるのかといったら、死の恐怖よりも、護るべきものへの強い思いが勝るからではないか。

一度ならず二度までも特攻できずに帰還し、さらには脱走する吉川(渡辺篤史)のエピソードは涙なしでは観られない。
母ひとり子ひとりで育った吉川は言う。自分は死ぬのが怖いのではない、自分が死んだら一人残された母はどうなるのか…と。しかし母親(笠置シヅ子)からは「そんな卑怯者に育てた覚えはない」と罵倒され、吉川は自ら命を絶とうとする。
この一部始終を見ていた宗方は、吉川の罪を問わなかった。
そして吉川は、自分を庇ってくれた宗方の温情に報いたいと、立派な最期を遂げる。
これはこの作品でいうところの「悩みを乗り越えた」瞬間なのだが、越えたその先が人生の最期というのは、なんとも辛すぎる時代だ。
吉川の遺骨を手にした母は泣き叫ぶ。
「この子を卑怯者に育てればよかった、そうすればこんなことにはならなかった」
これは戦争で子を亡くしたすべての親の心の叫びだろう。

山本麟一と梅宮辰夫の兄弟のエピソードも印象深い。
「部下をもっと人間らしく扱えないのか?」と言う弟の梅宮辰夫。
兄の山本麟一は、目をカッと見開き震えながら答える。
「命を捨てるか、心を捨てるか、どっちかを選ばなきゃならない」
これが戦争のすべてなのだろう。
ひとりひとりの家族や生活のことなんて考えだしたら、辛すぎて命令なんて出せやしない…。人知れぬ上官の苦悩に、涙が止まらない。

終戦のシーンはあまりにもあっけないのだが、実際こんなもんだったのかもしれないな。
ポツダム宣言受諾が決まった後も玉音放送のその瞬間まで特攻させるとは、本当にこの国は狂っていたとしか思えない。それが戦争というものなのだろうけど。

ラストの夕陽のシーンはカラーになる。
赤い夕陽は特攻で命を落とした人たちの魂なのかもしれない。

最後の特攻というと、玉音放送の後に出撃した宇垣纏中将の話が有名だが、この作品は宇垣中将とは関係ないとのこと。それでも、ラストは宇垣中将と重なるところがある。
こうして散っていった人もいるのだということだけは覚えておきたい。

【ビデオ配信】最後の特攻隊