昭和名作館

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「野菊の墓」~~悲しくも引き裂かれた淡い恋

野菊の墓
1981(昭和56)年/東映
監督:澤井信一郎
出演:松田聖子/桑原正/加藤治子/村井国夫/赤座美代子/樹木希林/愛川欽也/白川和子/島田正吾/丹波哲郎
主題歌:「花一色~野菊のささやき~」松田聖子


伊藤左千夫の同名小説の映画化。過去には『野菊の如き君なりき』のタイトルで二度映画化されており、本作は三度目の映画化作品である。
澤井信一郎の監督デビュー作で、松田聖子の映画初主演作品でもある。


15歳の政夫(桑原正)と従妹で17歳の民子(松田聖子)は互いに心を通わせ淡い恋心を抱いていたが、周りの大人たちは二人の仲を中傷し、さらには二人を引き離そうとする。
予定を前倒しして中学に入学することになった政夫は家を出て寄宿舎暮らし、そして民子には縁談が持ち込まれ周りの大人たちが一方的に話を進めていくのだった…。


オープニング、アイドルオーラ全開のキラキラスマイル松田聖子に笑ってしまう。なんだこれは?アイドルのイメージビデオか??
そして主演の二人がものすごい大根。しかも、松田聖子はどう見てもアイドル・松田聖子にしか見えないのだから困ってしまう。
「あぁ、これは大ハズレか…」と思ったのだが、話が進むにつれて二人の素人っぽい演技が逆に良く見えてくるのだから不思議。そして、気付けば途中から涙が止まらず…完全にやられた。

小学生の頃に原作を読んでいるはずなのだが、ビックリするくらい内容を覚えていなかった。あぁ、こんなに悲しい話だったか…と。今の年齢になったからこそ感じることも多い作品だと思う。

なんといっても、映像が美しい。
互いを野菊とりんどうの花になぞらえて「大好き」と言い合う二人、民子の嫁入り行列を追う政夫…。
小さな花に込められた二人の深く切ない思いが画面から溢れてきて、涙なしでは観られない。

世間から姉さん女房だと後ろ指差されることがあってはならない…と、政夫と一緒になることを許されなかった民子。
この作品の舞台となっている明治時代には姉さん女房は一般的ではなく、農村の女性が民子くらいの年齢で嫁に出されるのもごく普通のことだったのだろう。しかし、そういう時代とはいえ、わずか17の娘が周りの大人みんなから言い含められて追い出されるというのは、なんとも悲しく辛すぎるではないか。

最初は二人を引き離そうと必死だった樹木希林が味方に回るのが唯一の救いか。

吉岡の家に嫁いでからも厳しい扱いを受ける民子。旦那は一切登場させないことで、姑の厭らしさや民子の苦悩が際立つ。
この時代の女の人たちは、みんなこうやって耐え忍んで生きてきたのだろう。

大人連中が揃いも揃ってあんな酷い仕打ちをしておいて、死んでしまったら「悪いことをした、許しておくれ」だなんて、反吐が出そうになる。そんな薄汚い涙になんの意味があるのか?
人間って、本当に勝手なもんだ。
 
民子はどこに行っても居場所がなくかわいそうな娘だったが、純粋にただ一人の人間と深く愛し合う喜びを知っているという意味では、幸せな人生だったのかもしれない。

【ビデオ配信】野菊の墓