昭和名作館

音楽・映画・本など・・・昭和作品あれこれ。

「君よ憤怒の河を渉れ」~~仕掛けたのは誰だ?

君よ憤怒の河を渉れ
1976(昭和51)年/松竹
監督:佐藤純彌
出演:高倉健/中野良子/原田芳雄/池部良/大和田伸也/下川辰平/大滝秀治/西村晃/岡田英次/田中邦衛/伊佐山ひろ子/倍賞美津子


原作は西村寿行の同名小説。
罠にはめられた現職の検事が追跡から逃れながら事件の真相を探る、アクション・サスペンス映画である。
タイトルの「憤怒」の読みは、原作は「ふんぬ」だが、映画では「ふんど」となっている。


検事の杜丘(高倉健)は、ある日突然身に覚えのない罪を着せられ逮捕される。無実を訴えるも、見つかるはずのない証拠が家宅捜索で次々と見つかり、杜丘は隙をみて逃亡する。
自分を犯罪者に仕立て上げた女を追って、杜丘は能登へと向かったのだが…。


検事役の健さんだが、オープニング直後にいきなり「あの男が犯人よっ!!」と濡れ衣を着せられ、そこから逃亡劇が始まる。
信じてくれる人がいないって、辛いことですな。

最初から最後まで息つく暇もない緊迫感溢れる作品なのかと思いきや、意外とマヌケっぽい展開が続く。

能登へ、北海道へ…と逃亡する健さんのバックに流れる、緊張感のかけらもない軽妙な音楽…なんだこりゃ。
このBGMは多分『第三の男』を意識しているのだと思うが、この映画の展開とは絶望的に合ってなくて笑いすら込み上げてくる。

そして他にも出てくる出てくる、ツッコミたくなるシーンの怒涛の連発!!

明らかに着ぐるみ感丸出しの熊!
ほんの数分ちょちょいとレクチャー受けただけで、免許もないのにセスナを操縦してしまう健さん!!
周りに通行人がいるのに、街中でなんの躊躇もなく発砲する刑事!!!
新宿の街のど真ん中で馬を乗り回す中野良子と健さん!!!!

こりゃあ、ぶったまげたぜ!!
最後も「それちょっとどうなん?」と思ったりするんだけど、もはやそんなことはどうでもいいわ。

「なんだこりゃ!」とか言いながらも、なぜか目が離せない。気付けばすっかりこの作品の虜。岡田英次が開発したAXの作用が画面越しに伝染して、私もおかしくなったのかもしれん。
なんかよくわからんけど、2時間半もの時間を飽きることなくすっかり楽しんでしまった。

タイトルにもある「憤怒」の激しい感情はあまり伝わってこない。
健さんが演じると、なんだか淡々とした印象になる。
でも、人間本当に激しく怒り狂っているときって、案外そういうものなのかもしれないな。