昭和名作館

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「家族」~~幸せをどこに置いてきた?

家族
1970(昭和45)年/松竹
監督:山田洋次
出演:倍賞千恵子/井川比佐志/笠智衆/前田吟/塚本信夫/花沢徳衛/渥美清/春川ますみ


山田洋次の「民子三部作」の第一作。
日本列島縦断ロケを敢行し、長崎から北海道まで旅する一家をドキュメンタリータッチで描いている。


長崎の伊王島で暮らす民子(倍賞千恵子)は、「北海道で酪農をやりたい」という夫の精一(井川比佐志)の決断に当初反対するが、精一の固い決意を聞いて翻意し、家族で北海道の開拓村へ移住することになる。精一の父・源蔵(笠智衆)は、福山にいる次男・力(前田吟)の世話になることにするがお荷物扱いされ、結局民子らと一緒に北海道へ行くことになる。
福山をあとにした一家は、万博が開催されている大阪、そして東京へと移動するが、東京に着くと長女の早苗の様子がおかしいことに気付く…。


タイトル通り、家族の在り方について考えさせられる作品である。
1970年当時の日本の映像資料的な意味でも、とても素晴らしい作品だ。

田舎から出てきた一家は都会の雑踏に圧倒されるも、やはり見るべきものは見たいのだ。電車の待ち時間に、強行で万博会場へ行ったりする。観る側としても、万博の雰囲気を味わえたのは貴重な体験だ。
都会の人は良い意味でドライで他人に無関心なところがあるけれど、それがときに冷たく感じることもある。田舎から出てきた人間にはなおさらそう感じるのだ。話しかけても答えもしない東京のタクシー運転手や、面倒そうな顔をする旅館の主人なんかは、ちょっと極端ではあるけれど都会の悪しき部分の象徴みたいなものだ。
都会と田舎、どちらが良いか?なんて議論はナンセンス。それぞれの良さがあるのだから。しかし、この作品の中では、都会の風景はとても悲しく冷たく映るのだった。

一家は旅の途中で、福山に住む精一の弟・力の家に立ち寄る。
別れ際、源蔵は「ひょっとするとこれでもう会えんかもしれん」という言葉を残し、力は涙を見せる。
年老いた親と遠く離れるということがどういうことか、そしてなによりも自分が発してしまった心無い言葉に対する後悔の念。これが親と最後に過ごした時間だなんて、なんとも悲しいことだ。

幼い子どもにイラつき、親をお荷物扱いし、夫婦でいがみ合い…。
いつだって幸せはすぐそばにあったはずなのに、それを忘れてしまうのはなぜだろう。
民子と精一には本当にイライラさせられるのだが、何も彼らが特別なのではない。これはいつかの自分の姿かもしれないのだ。
なんだか自分の家族のドラマを見せられているような気分にすらさせられる。
だから、イライラさせられるシーンも多いが、ジワジワと胸にくるものがあり、涙なしでは観られない。

人間、何かを失ってから本当に大切なものに気付くことがあるけれど、その前にちゃんと気付くべきなのだ。気付くというよりは「思い出す」というべきか。

緑映える北海道の大地のように、温かで優しい気持ちを抱かせてくれた作品だった。