昭和名作館

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「山椒大夫」~~安寿と厨子王伝説

山椒大夫
1954(昭和29)年/大映
監督:溝口健二
出演:田中絹代/花柳喜章/香川京子/進藤英太郎


原作は森鴎外の同名小説。
原作を読んだことがない方でも、安寿と厨子王の名前くらいは聞いたことがあるのでは。


時は平安時代末期。玉木(田中絹代)とその子・安寿と厨子王は、旅の途中で人に騙され、玉木は佐渡で遊女に、幼い安寿と厨子王は荘園領主・山椒大夫(進藤英太郎)の元へ奴隷として売り飛ばされ、過酷な労働を強いられる。
やがて二人は成長し、ある日、厨子王(花柳喜章)は安寿(香川京子)に「ここから逃げよう」と言い出す…。


悲惨な話とは裏腹に、絵画的な美しさを感じさせられる作品である。

人を人とも思わぬ山椒大夫の元で奴隷のように扱われる人々の画は、まるで地獄絵図。
安寿と厨子王を想う母の歌声は、地獄から聴こえるうめき声のよう。

荒んだ世界に咲く一輪の花のような心やさしき安寿は、白黒の世界にそこだけ色が射しこんでくるような美しさ。

母との悲しい別れ、安寿の入水のシーンは水墨画のよう。
その美しさゆえに際立つ残酷さ。

山椒大夫に売られた安寿と厨子王だけでなく、母もまた、貴族の奥方→遊女→盲目の老婆…と壮絶な人生を送ることになる。
老婆とはいっても年は45~6、絶望に打ちひしがれ廃人と化し老け込んだ女を見事に演じた田中絹代の女優魂はすごい。


この作品の感想を簡単にまとめるのは難しい。
何といってよいものか、適切な表現がなかなか思い浮かばない。感じることは多々あるのだけれど、それを言葉にするのがすごく難しい…というか、それを避けようとしている自分がいるのかもしれない。

とても美しい映画なのは間違いないのだが、なにか見てはいけないものを見てしまったような、見世物小屋でも覗いてしまったかのような気分にさせられる…とにかくすごいものを観てしまった、そう思わせる作品なのだ。