昭和名作館

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「若い人(1937)」~~幸せはどこに。

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若い人
1937(昭和12)年/東宝
監督:豊田四郎
出演:市川春代/大日向傳/夏川静江/英百合子


これまでに4度映画化されている「若い人」の初映画化作品。

裕次郎主演の62年版についてはコチラ。


いま観るとなんてことはないけど、昭和12年当時としてはかなり衝撃的な作品だったのではなかろうか。

裕次郎・ルリ子・小百合が演じた62年版を観た後だと、全体的に盛り上がりに欠けるし、ちょいと物足りない感じは否めない。
しかし、本作の方が静かで淡々とした空気の中に人物の心情がよく見える。その点、62年版は華やかさで誤魔化してしまっている感があるかも。

静かな中にも沸々と燃え上がる、橋本先生(夏川静江)の江波(市川春代)に対する嫉妬の炎と、乙女の恥じらい。
そして、孤独な江波の深い心の闇。
このへんの心情描写は本当に素晴らしいと思う。
特に江波は狂気すら感じさせ、なにかゾゾッとさせられる瞬間がある。62年版で江波を演じた吉永小百合には、こういうものは全く感じなかった。市川春代が演じる江波恵子は必見!!

「女の幸せって、男の方からじゃないと頂けないものなの?女ひとりの幸せって世の中にないものなの?」
「いま世の中で、誰が一番幸せだか知ってる?わからない?それはね、重い打掛を着て、角隠しをして、古風な金屏風の前で固めの杯事をしている人」
これらは江波の台詞。
お嫁さんになることが一番の幸せだなんて、いま聞くと少々滑稽に思えるけれど、そういう時代だしね。
女性が自由に生きられなかった時代、特に江波のように愛を知らず生き辛さを感じている人間が、誰かにすがって幸せにしてもらいたいという気持ちは痛いほど伝わってくるのだが、彼女が自分の中に本当の幸せを見つけてくれることを只々祈るばかりだわ。

この時代の修学旅行の風景なんかも、非情に興味深かった。

ラストはいいところで終わってしまって、消化不良な感じは否めない。
「若い人 北国篇 終」と出てきて終わるので、原作が完結したらすぐに北国篇の続編も撮るつもりだったんでしょう。
結局、続編は撮られていないのだけど、このキャストでの続きが観たかったな。