昭和名作館

音楽・映画・本など・・・昭和作品あれこれ。

「ビルマの竪琴」~~おーい、水島!(´;ω;`)

ビルマの竪琴
1956(昭和31)年/日活
監督:市川崑
出演:三國連太郎/安井昌二/浜村純/西村晃/北林谷栄


原作は竹山道雄が書いた児童向け作品。


1945年7月、ビルマ戦線で苦戦を強いられていた日本軍のとある隊。
音楽学校出身の井上小隊長(三國連太郎)は、隊員に熱心に合唱を教え込み、彼らは歌のおかげで苦しい時もどうにか元気にやっていくことができた。
竪琴の名人である水島上等兵(安井昌二)は、その演奏で隊を盛り上げた。
やがて終戦を迎えるが、その後も抵抗を続ける三角山守備隊を説得する任務を受けた水島は、三角山へと向かい、そのまま消息を絶つ…。


リアルな戦闘描写のある戦争映画が見たい人には物足りないかもしれないけど、この映画にそういうのを求めるのはちょっと違う気がする。

ごろごろ転がる同胞の屍を目にし心を痛める水島。なぜ彼はビルマに残らねばならなかったのか。戦争とはなんと無意味で虚しいものか。多くの人命を奪っただけではなく、残された人間の人生をも大きく変えてしまった。
屍にたかる鳥の群れなど、リアルな戦闘シーンを見せられるよりもよっぽど残酷だと思う。
水島の葛藤に胸が苦しくなり、なんともやり切れない気持ちになるが、音楽が唯一の救いになっている。

全編に流れる隊員たちの合唱と竪琴の音色が本当に美しい(竪琴はハープの吹き替えらしいが)。
この作品で歌われている曲は以下の通り。

♪旅愁
♪嗚呼玉杯に花うけて
♪埴生の宿
♪もずが枯れ木で
♪信田の藪
♪荒城の月

もう、竪琴の音と合唱を聴いただけで涙が出てくる。
特に、敵国の兵士も一緒に『埴生の宿』を合唱するシーンは圧巻。もうね、CMとかでこの曲が流れてくる度に、この映画を思い出して泣きそうになるわ、ホント。
敵と一緒に合唱とかリアリティに欠けるわ、そんなのただのファンタジーじゃねーかと言う人もいるかもしれないけど、これ元々児童向けの寓話だしね。それを考慮した上で素直に観られない人にはオススメできないかも。

水島が『仰げば尊し』を演奏して霧の中に消えていくシーンは、もう涙で画面が霞んで見えない…。
最近ではこの曲を知らない人も多いと聞くのだが、この曲の歌詞を知らないまでも、どういう曲であるかを知らなければ、この深い感動は味わえないでしょうね。

唱歌や童謡には、他の音楽にはない、なにか特別な力があると思うの。
言葉や音のひとつひとつに美しい魂が宿っているのを感じる。

話が逸れて申し訳ないが、4年前の震災の時、私はあまりのショックで音楽が聴けなくなってしまった。それまで大好きで聴いていた曲ですら全て受け付けなくなってしまった。
そんな酷い精神状態のなかで唯一聴けたのが、唱歌や童謡だった。
あるとき、ふいにテレビから聴こえてきた『ふるさと』の優しい響きに、もう嗚咽が止まらなかった。変わり果ててしまった故郷の姿を見た悲しみ、無理をして抑えつけていた感情が全部あふれてきたのだった。
あの歌声に、やり場のない悲しみを全て受け止め包み込んでくれるような温かさを感じずにはいられなかった。

この映画にも、なにかそういうものを感じるんだよね。

やり切れない悲しみ、生き残った者の自責の念、葛藤、その慰めのようにもとれる美しい音楽…。
静かな中にも強いメッセージ性のある、素晴らしい名作。

 

リメイク版

1985(昭和60)年/東宝
監督:市川崑
出演:石坂浩二/中井貴一/川谷拓三/菅原文太/北林谷栄

実はこちらを先に観てからオリジナル版を観たんだけど、私はどちらも同じくらい好き。それぞれに良さがある。
ただ、やはり実際に戦争を経験している役者が多いのもあって、リアルさではオリジナル版の方が上。

北林谷栄が前回と同じ役で出ているが、ほとんど変わっていないのが凄すぎる(笑)

オリジナル版で歌われていた『もずが枯れ木で』『信田の藪』は歌われておらず、替わりに『朧月夜』『箱根八里』などが歌われている。

リメイク版ではビルマの大地をカラーで見られたのが非常に大きいと思う。
そして、水島が納骨堂に納めたルビーの色も、カラーで見せることで効果的に訴えるものがある。
ビルマの大地の赤い色は、そこで流れた血の色と同じ赤い色。死者の魂と同じ赤い色。
「ビルマの土はあかい 岩もまたあかい」
市川監督がどうしてもカラーで撮りたかったというのがわかる。