昭和名作館

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「日本のいちばん長い日」~~どれだけの日本人がこの史実を知っているのか?

 日本のいちばん長い日
1967(昭和42)年/東宝
監督:岡本喜八
出演:三船敏郎/笠智衆/黒沢年男/山村聰/志村喬/高橋悦史/島田正吾/天本英世/加山雄三/松本幸四郎


これまでに観た邦画の中でも、特に素晴らしい作品のひとつだと思う本作。
夏になると観たくなる。


終戦前夜に起きたクーデター未遂事件(宮城事件)について詳細に描かれているのだが、一体どれだけの日本人がこの事件について知っているのだろう?
恥ずかしながら、私もこの作品を観るまでは事件について一切知らなかった。
日本人なら一度は観ておくべき作品だと思う。


終戦前夜、昭和天皇の御聖断に抗して玉音放送を阻止するべく畑中少佐(黒沢年男)らがクーデターを企てる。

黒沢年男の狂気に満ち満ちた演技には度肝を抜かれるが、その狂気の中にも限りない純粋さが見えて胸を打たれる。
彼らをただの暴走軍人と見るのはどうなんだろう?
徹底した軍国教育を受けてきた青年にとってはあれこそが正義であり、ただひたすら真っ直ぐに信じる正義の道を突き進んでいっただけ。
今の時代、あれだけ純粋な思いで命がけで生きている日本人がどれだけいるっていうんだろう。クーデターどうこうは置いておいて、この真っ直ぐな純粋さにはある種の羨ましさのようなものすら感じる。

現代日本人の視点からみたらあんなクーデターなんて理解できないのかもしれないけど、それは戦後の日本しか知らない私らだから思うことであって。降伏したらどうなるかなんて、このときの日本人にはわかりゃしなかったんだから。

阿南陸相を演じる三船敏郎の切腹シーンは、思わず目を背けたくなるほどのド迫力。
彼の最期の言葉は、すべての日本人が心に留めておくべきではなかろうか。

全編に渡って緊張感が漲り圧倒される、重厚な作品。

岩波文庫の『出家とその弟子』をポケットに突っ込んでいた横浜警備隊の学生なども、なかなか印象深い。
私はこの映画を観たのがキッカケで『出家とその弟子』を読んだ。少しでも当時の学生の思想などの理解に繋がればと思って読んだのだが、これがまたなかなか面白かった。

そして見るのも辛い…無条件降伏を知らずに出撃していく、まだあどけなさの残る特攻隊員…。
彼らのような若い尊い命の犠牲の上に今の日本があるということを忘れてはならない。

この映画とは関係ないが、先日とある新聞の投書で、終戦(玉音放送)の10分前に銃撃を受けて死んだ人の話を読んだ。
この作品で描かれている一日の間にも、本当なら助かっていてもよいはずの命が沢山失われていたということ。なんともやり切れない悲しい気持ちになる。

終戦から70年。当時を知る人が年々少なくなってきているが、だからこそ色々知って考える必要があるのでは。

 

今夏リメイク版公開

8月8日(土)には、リメイク版が公開される。
オリジナル版が偉大すぎる作品であるが故、リメイク版も相当期待されていると思うし、今回リメイク版の製作に当たったスタッフや出演者の方々も並々ならぬプレッシャーを感じながらの撮影だったのではなかろうか。

特に、昭和天皇の役を演じる本木雅弘。
オリジナル版では先代の松本幸四郎が昭和天皇を演じていたが、その顔は一切映し出されなかった。
今回は普通に顔を出して演じているようだが、どのように演じられているのか、非常に興味深い。昭和天皇を演じるというのは普通の役を演じるのとはワケが違うし、色んな記事を見てみると、モッくんも相当な重圧で苦しい日々を送っているようで。それでも演じきった彼には敬意を表したい。

そして、リメイク版では昨年宮内庁から発表された『昭和天皇実録』も取り入れているそうなので、オリジナル版と比べてどうなっているのか非常に楽しみ。

nihon-ichi.jp

 

玉音放送の原盤公開

数日前にニュースになっていたが、玉音放送の原盤が音声とともに8月1日に宮内庁のHPで公開されるとのこと。
これまでに公開されていた音声は複製のもので、原盤が公開されるのは初めて。
戦後70年の節目に、大きな意義のあることではないだろうか。

また、同じ8月1日にはNHKのBSプレミアムで『玉音放送を作った男たち』という番組が放送される。
こちらも見てみると、映画の理解もより一層深まるかもね。

ザ・プレミアム 玉音放送を作った男たち - NHK